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住宅市場成熟化に対する処方箋

金融機関が当該スキームで商品化を考える場合、まず問題となるのが「不動産価格下落による損失負担」部分です。特に、日本の場合は中古住宅市場があまり普及していないことから、当該リスクをどのように考えるかがポイントとなります。対象とする不動産の5年後の市場価格を推計することができれば、当該推計価格の最大値、最小値、中央値を利用し、金利プレミアム(0. 5%)によってある程度をカバーすることができます。ただし、本件スキームの対象となる不動産に関しては、都市部等で市場価値のある物件が前提となります。不動産開発会社や不動産販売会社が提供する不動産であり、かつ、二次マーケットを形成している場合には効果的に活用できるものと考えられます。

また、対象とする商品を複数(500先、金額的に100億~150億円程度)まとめることで証券化スキームを活用し、全体として不動産下落リスクを軽減する方法も考えられます。借主が約定どおり返済できるか否かという「債務不履行=デフォルト」するリスクに関しては、一般的な住宅ローンの利用状態の分析結果からみると5年以内に発生する確率は非常に低いことから、信用リスクについても、あまり考える必要はないものと思われます。また、保全措置の考え方ですが、一般的には不動産に対して「抵当権」を設定するケースがほとんどですが、本件商品の基本コンセプトは「物件を売却すること」を前提としているため、「代物弁済予約による所有権移転仮登記」により保全を図ることとします。

一方、利用者側からすると、最終的には物件処分により借入金を返済することが前提となりますが、自己資金が必要なく、物件の市場実勢価格の推移によっては物件処分によってキャピタルゲインを得ることも可能であり、ライフスタイルに沿った住宅の利用を考えることができます。また、定期的な収入がある方であれば、国外の方=非居住者の方も日本に滞在する期間中だけ利用することは可能でしょう。仮に、5年目に期日が到来し、当該物件を中長期的に保有することを選択した場合、期日一括返済分の元本を当該実勢の金利による通常型の住宅ローンに組み直すことが考えられます。

物件により代物弁済した後に、当該物件を市場の実勢価格で買い取ることを可能とするオプションを設定し、物件価格が上昇している場合は売却して利益を受け取る(50%)、下落している場合は実勢価格で購入することができる(=下落した分ローンとする金額が減少する)という契約をオプション手数料として申し受ける仕組みを考えれば、利用者にとっては市場価格がどちらに変化しても、メリットを受けることが可能となります。また、物件の価値に対して融資することを前提とした商品でもあり、保証会社の利用を想定しないとした場合、現在の住宅ローンでは利用が一般的となっている「保証料」部分を当該オプション料として申し受けることで、物件価格の下落リスク相当分として金融機関側もフィーを受領し、かつリスクヘッジも考えることが可能です。

本件スキームに関しては、全国的に利用できるモデルではありませんが、不動産価格の将来価値をある程度推計できる仕組みを構築できる市場環境にある物件であれば、さまざまな応用も考えることは可能であると思われます。たとえば、地方に住んでいる高齢者世帯は、医療や福祉面を考えた場合、老後は施設等が充実している都市部で生活したいというニーズも今後高まる可能性が考えられよすが、その際、本件スキームにより不動産価値を活用しながら5年おきに見直しながら利用することも考えられるでしょう。また、金融機関にとっても、今後住宅市場が成熟するなかで、新たな顧客層を開拓するには、現在考えられている住宅ローンスキームだけではなく、資産価値を有効に活用したモデルについても検討する時期にきているのではないでしょうか。

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