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賃料価格の推移や見込みを把握する重要性

不動産物件を建築する際には「公法上の規制」を受けるため、建築基準法や都市計画法、国土利用計画法に合致しているか否か、不動産に絡む問題(近隣地権者との問題や第三者の権利関係の問題等)は解決されているか否かの確認が必要です。また、建築請負会社や建築会社の優劣の見極めも必要です。技術的な問題で欠陥工事など物件そのものに瑕疵が生じれば不動産としでの商品価値は大幅に低下してしまいます。また、その対応のために、開発計画コストや取得予定価格が大幅に増加し、収支計画そのものの見直しが必要となり不採算事業化する可能性もあり、綿密な計画が必要となります。

また、賃料価格の推移や見込みを適宜適切に把握する必要があります。賃料については近隣競合物件の立地状態や賃料設定による需給バランスの変化により物件保有者の意思に反して変動しますので「賃料は低下する」前提で収支計画を立てる必要があります。入居したテナントや居住者についても、特定の会社等に集中していると退去後テナントを確保できないケースも想定されます。

また、不適切なテナントの入居や占拠によりテナントが退去するケース等も発生しますので、優良なテナントを確保できる状況になっているか否か、結果として、物件の稼働率(~賃料を得られる状態)を一定に維持できるか否か考える必要があります。基本的には「空室状態が発生する」という前提で収支計画を立て・る必要があります。以上をふまえ、不動産を保有し稼働させている広義の不動産賃貸業を審査する際の留意すべきポイントは以下のとおりです。信用力のあるテナントを確保できているか、また、大口のテナントの場合は長期賃貸契約になっているか、一定の入居者を確保できているか否かがポイントです。

また、適用される平均賃料に関しては、市場実勢と比べかけ離れていないか、個々の入居者との契約に関しては契約期間の更新方法(入居保証金や敷金の扱い等)を確認する必要があります。年間の収支計画と実績を検証するうえでも保有するすべての賃貸不動産の「入居者の情報(会社情報や風評等)、契約情報(期間や入居保証金の有無、賃料の更改条件等)、料金情報(月額賃料と共益費等)」を定期的に調査しておくことが重要です。また、敷金や入居保証金に関しては近年見直しの傾向がありますので、近隣の情勢も加味しながら検証することが必要です。

アパートローンの推進・管理手法

新規に住宅ローンを利用されたお客さまは、家族も含め毎年毎年成長し、そのつど金融に関するニーズが発生します。ニーズを適宜適切にとらえ、さまざまな商品やサービスを提供することで、お客さまが離脱する可能性を抑え、伺時に、金融機関としての収益性を向上させる長期継続的な営業モデルを体系化することです。金融機関が扱う商品サーピス機能としてはクレジットカード機能の「顧客管理機能」「会員機能」を有効に活用することが考えられるでしょう。30代前半で家を取得、家族が成長する過程で、「保障」というキーワードから貯蓄系の商品サービス、保険関連商品を販促し、50歳を超えた時点で住宅改装も含めたリフォーム資金を提供する、最終的に住宅ローンが完済された時点では、既存の「住宅資産の有効活用」や「相続」という点も視野に入れたサービス提案が必要になってきます。

一連のライフステージ変化に対応した長期継続的な営業活動モデルを確立することが望まれているのです。金融機関では、広義の住宅ローン債権の範躊にアパートローンを含めるケースがあります。不動産賃貸業を業とする個人事業主ではなく、相続対策や資産の有効活用という観点からアパート資金を貸し出している純粋な個人に対するローンを対象としているものです。金融機関の営業戦略上、個人の方で遊休不動産の有効活用を考える場合や、土地持ち富裕層の相続対策として、借入金による賃貸アパート事業を計画される方も多く、長期資金の需要発掘の意味から積極的に推進してきた経緯があります。

ここではアパートローンにおける審査基準の考え方、実行後の債権管理の方法について考えることとします。個人先に限らず、一般的に不動産賃貸業者に対する審査の場合、保有する不動産(=賃貸物件の立地条件や設備等)の外的要因と設定された賃料体系により、収入の源となる「テナント=入居者」の契約率が決定しますから、対象とする物件からどれだけ収益を見込むことができるかが最大のポイントとなります。最新の設備を擁したハイテクの物件であっても、立地条件(交通アクセス等)が悪く、賃料価格が実勢価格からかけ離れていればテナントは入居しません。一方で、築年数がたっていても立地条件が良好(駅近)で、手入れが行き届いており、管理状態が良好であれば相応の賃料でも入居者を確保することは可能です。

つまり、利用者のニーズに合致した物件なのか、また、保有している物件のメンテナンスを頻繁に行っており良好な管理状態を維持しているか、市場実勢に合致した賃料体系につど見直しを行っているか、上さらには、テナントや入居者の入替え頻度なども含め、総合的に判断しなければなりません。ホテル業も同様ですが、建築してしまった物件は、簡単に建て替えたり立地条件を変えることは物理的に不可能ですから、建築計画段階から詳細な計画を立てる必要があります。不動産を所有する際のリスクを正確に理解し対応策を講ずることができるか否かの見極めが必要となります。金融機関として審査するうえで最低限確認すべき事項は「開発取得計画」と「収支計画」の2点になります。

住宅ローン利用者向け営業モデル

給与振込みなど一定の入金がある取引先で当該事象が発生する場合は特に注意が必要となります。仮に、このようなケースが頻繁に発生する場合は、、現在の返済条件が厳しいことも想定されますから、要因が一時的で今後回復する見込みのある方など、リスク管理上の許容範囲のなかで条件変更等を金融機関側から能動等的に働きかけ、月次の資金収支を改善する提案を行うなど、取引関係を強化することも考える必要があります。「プリペイメント見込先」に関しては、取引関係が疎遠になる傾向を預金・貸金の残高推移から見極めることができます。

繰上返済については、余剰金が発生したつど、返済するケースと、他金融機関から現在よりも好条件で借入れをして全額返済するケースに分類することができますが、前者の場合は、繰上返済する資金を長期的に運用することで老後の資産設計に役立てるメリットなどを訴求し、残高維持を図ることが考えられます。一方で後者の場合は、繰上返済の要請があった時点で、他の金融機関と交渉が成立しているケースがほとんどであり、返済を止めることはきわめてむずかしくなりますので、兆候を事前に把握し、早目早目の対応をとらなければなりません。

前者、後者の傾向を見極めるうえでは、一定期間中のローン残高の減少額の割合と預金残高の減少額の割合の検証により兆候をとらえることができます。特に、全額繰上返済となる可能性のある対象先に関しては、預金取引が極端に減った場合は注意が必要であり、現在の住宅ローン商品の適用金利が、現在の市場商品の金利と比べ極端に高いようであれば適用金利を引き下げる等の条件提示により脱落を予防する措置をとることがポイントとなります。また、情報の整備状況にもよりますが、ATMの利用状態や口座の利用状態の変化から予想することも可能です。

以上のように、整備されている金融機関内部情報を活用し、住宅ローン残高維持に影響のあるお客さまを見つけ出すことは可能となりますが、対象となったお客さまに対して金融機関としてどのような営業活動を展開するのかを考える必要があります。安全で収益性の高い資産構造へ変革するためには安易な金利引下げ交渉を行うのではなく、顧客指向の営業展開を考えることが重要です。つまり、適正な時価額判定(=適正なLTV)によるローン商品とともに、保険関連商品(長期火災保険や所得補償保険、家財保険等)を毎年定期的にクロスセルする環境を整えることです。単に保険商品の販売により新たな手数料収入を得るということが目的ではなく、お客さまと定期的なつながりをもち、かつ最新の情報を入手し、途上与信の判断に活用する仕組みをつくることが重要です。

融資金を回収できなくなる信用リスク

現時点でも収益採算性が厳しくなっている状況下、長期継続的な取引を維持できなければ、獲得に要した費用の回収もむずかしくなることが予想されており、契約を解約されないための方法論=プリペイメントリスクヘの対応手法を早期に確立する必要があります。また、経済環境の影響により住宅ローン利用者が、返済に窮することで返済を滞り、融資金を回収できなくなる信用リスクに関しても、今後は現状以上に高まる可能性を秘めており、リスク管理という面からも「既存住宅ローン利用先」の管理に関しては力を入れる必要があります。まず、第一に顧客の判定基準として体系化した「LTVとDTI」による格付実態をベースに、各金融機関内部で定めている顧客管理基準、収益基準、取引経過年数を用いて対象とする顧客グループを細分化していきます。

さらに、細分化した顧客グループを債務者特性であるライフステージを参考に、再度、細分化することとなります。以上の基準で細分化された顧客グループごとに「仕振項目」を活用して一定斯間の取引状態を検証します。取引内容が良好な先でさらに取引を強化すべき顧客グループ、取引状態が停滞しており取引を活発化させたい顧客グループ、取引が疎遠となり解約される可能性が高い顧客グループ、さらには、取引状態が悪く契約不履行となる可能性が高い顧客グループに分類することができます。

一定期間中に当該顧客グループのなかで「繰上返済」を行っている先、「約定返済が一時的に延滞」となっている先、「口座振替契約の引落しが連続して行われない」先、さらには「長期間延滞の状態」になっている先、「代位弁済手続を行った」先などを検証することで、リスク管理上、「途上管理」を徹底すべき顧客像を見つけ出すことができます。住宅ローン債権管理を前提として、「リスク顕在化先」をどのようにして見つけ出せばよいのか、「プリベイメント見込先」をどのように見つけ出せjばよいかの2点について体系化された情報活用モデルとして参考までにまとめてみましょう。

「リスク顕在化先」に関しては、住宅ローン利用先だけではなく、事業法人先にも適用できるモデルですが、決済口座に登録されている「口座振替」契約の履行状況を6ヵ月間検証し、期間中に3回以上口座引落し不能となった場合、返済原資である手元資金が厳しくなってきているのではないかと考えることができます。また、給与振込み等定期的に入金となるサービスを利用していない取引先に関しては、住宅ローンの返済原資は他金融機関から振り込まれてくる可能性が高いことから、振込みが遅れ残高不足により一時的に約定返済が滞るケースが2回以上発生している場合もあわせて選定条件として考慮する必要があります。

住宅ローン取引のあるお客さまの維持・管理の重要性

特に、従来の金融機関の営業推進面では、金融機関全体のボリュームや収益等の計画は精緻に策定するものの、実際に施策を実行に移す場合は営業店の裁量に任せているケースがほとんどであると思われます。リスク管理面から考えれば、いかにしてリスクの少ない優良な顧客を獲得し、維持することができるかという点を考えた行動ができるように、営業現場をサポートする体制を整備することが求められます。つまり、本部企画部門が年間の「融資取組方針」を策定し、当該策定基準に基づき営業推進部門が目標を設定、目標達成を実現すべく推進目的に合致した対象先となる顧客の情報を営業店現場に還元する仕組みが必要なのです。

具体的な推進の方法を営業現場に任せるのではなく、リスク面を事前に検証したうえで、推進すべき目的別に対象顧客情報を営業現場に還元することで「顕在化する可能性のあるリスク」を事前に統制すると同時に営業店現場でバラツキのあった活動を統一化させることが必要なのです。また、対象とすべき顧客に対する具体的な営業活動を実施した結果、案件が成約し審査段階になった時点でも、審査業務の効率化と厳格化を徹底すべく、対象顧客の情報を効果的に活用することが考えられます。

案件化された内容について、当初決定した「融資方針」に基づく条件面での齟齬はないか、優遇する場合の条件面は適正か否かについて、体系化された情報に基づき検証するスキームを確立することで条件違反となるリスクを統制することが可能となります。さらに、実行後の管理についても、モニタリング機能を強化するには体系化された情報を効果的に活用する必要があります。日々の管理業務としては延滞発生時の対応はもとより、延滞になる可能性が高い顧客を事前に見つけ出し、延滞をさせないような活動を行うことも必要ですし、継続的な取引ができるのか否か、「途上与信」をする際にも顧客情報を活用することができるのです。

現在、金融機関における住宅ローン業務のなかで最も重要な要因は、すでに住宅ローン取引のあるお客さまの維持、管理をいかにして効率的かつ厳格に行うかという点です。住宅ローン市場に関しては、少子高齢化に伴い今後急速に縮小するものと予想されており、一方で、金融機関は今後も積極的に住宅ローンの取扱いを強化するとされており、金融機関の間の「既存住宅ローン利用者」の奪い合いが、今後ますます激しくなることが予想されています。

債務者を基軸とした分析結果の具体的活用手法

債務者を基軸とした分析を行った結果をどのように活用したらよいのかを考えてみたいと思います。基本的には金融機関におけるポートフォリオ管理という観点から、事態を把握するための活用方法が主体となります。特に、住宅ローン債権分類ごとのリスクの実態を正確に見極めるには事業法人向けの格付に基づくリスク分析と同様に、住宅ローン債権を対象として策定した判定基準=格付を活用することでより精緻な検証ができます。格付別の実態を集計すると同時に、前回基準と比較して格付結果がどのように変化しているのか「格付遷移」により実態を見極めることができます。

特に、バブル崩壊後の低成長時代は物件の価格は横ばいか低下傾向にあることから、格付基準のベースとなる融資残高に対する物件時価額の比率=LTVは悪化する傾向が強く、格付遷移上は悪化するグループの割合が増加するものと思われます。経済情勢の変化により延滞する利用者がどの程度変化するのか、物件時価額に関しても過去のトレントや最近の市場性を考慮し、将来的な価格変動を予測することで、金融機関(グループ)にとってのリスクの顕在化を予測することも必要になると考えられます。

また、新BIS規制における自己資本比率算出手法に「標準的手法」を採用している金融機関については、資産査定時点において担保物件の時価額を洗い直し、査定時点のローン残高に対する時価額の割合が100%を超えているか否か確認することでリスクアセット計算をする必要がありますので、このような見方は必須と思われます。基礎的内部格付手法を採用されている金融機関においては、一定の基準に基づくグループ化=プーリングにより住宅ローン債権のポートフォリオの実態を管理していますので、当該グループ化基準を前提に定期的に分析することは可能と思います。

以上のように、定期的にポートフォリオの状態がどのようになっているのか、リスク管理面からとらえることも重要ですが、情報活用という観点からすると、住宅ローン業務全般の業務行程において、「攻め」と「守り」という観点から活用する方法を考えることも必要となります。融資業務全般にいえることですが、年初に本部企画部門において事業計画を立案し、その計画が営業店現場で実践されることとなりますが、情報の効果的な活用という観点から考えると、「案件発掘」「案件審査」「実行管理」という行程のなかで、最も重要となるのは「案件発掘」段階になります。この段階でいかにして効果的な情報を見つけ出し、営業店の現場に有益な情報として還元できるかが重要です。

住宅ローン債権の分析手法

縦軸と横軸を指定したクロス集計において、集計する項目を決定し、実態を検証することになりますが、収益や残高については平均単価も算出します。さらに、平均利鞘がどうなっているか、延滞の発生状態はどうなっているか、累積延滞がある先はどこのグループが多いのか、代位弁済した先はどこのグループに多いのか、条件変更の申出をした先はどこのグループが多いのか等、見方を変えながら各セルの特性を検証することとなります。この方法は、データ整備ができていれば、支店別や地区別に集計することも可能ですし、債務者特性であるデモグラフィック特性項目や商品適正項目等を用いることで、債務者特性から住宅ローン債権の実態を見極めることも可能です。

このように、さまざまな角度から検証を行うことで、債務者の特定グループの条件を体系化します。また、LTV比率については、毎期定期的に担保物件の評価洗い替えを行っているかと思います。保証会社の保証付住宅ローンの場合は、担保権者が保証会社となっていることから物件価格の定期的な見直しは必要ないと思われますが、関係会社が保証会社の場合は、金融機関が行うか、保証会社側が行うか議論が分かれますが、グループにおけるリスク管理という観点からは物件価格の見直しが必要と思われます。

また、物件価格の将来予測といったかたちで今後物件価格が何%下落するのか、あるいは上昇するのか等、シミュレーションを行いLTVの変化状況をふまえ、ポートフォリオ全体の変化をとらえることも必要になるのではないかと思われます。たとえば、貸出債権のポートフォリオのなかの「期間20年の変動金利型住宅ローン」の債権グループについて、そのグループのなかでデフォルトする可能性のある件数と金額を把握しようとすると、一顧客の情報をみなければ把握することはできません。これは事業法人も同じです。証書貸付の残高があったときに、その証書貸付の残高のなかでデフォルトする確率については、一社一社の債務者の格付を基準に、その格付基準=グループにおける推計デフォルト率を算出しなければなりません。

基本的には、一顧客=債務者を基本とした情報を整備しなければ検証することができないのです。つまり、住宅ローン債権についても同様の考え方をする必要があるのです。また、金融機関において計画を立案するには、経営管理系の機能と、営業推進系の機能をある程度組み合わせることで全体的な予算実績管理をする必要があるといわれています。そのためには、科目別明細ではなく、顧客を軸にした見方が必要になってきます。つまり、金融機関における債権債務のポートフォリオを管理するうえでは勘定科目明細による見方と取引顧客による見方が必要になってきているのです。