金融機関内部、さらには関係する保証会社に保存されている情報も含め、一定期間(最低でも過去3年間)の情報が整備され、毎年継続的に情報が蓄積される体制を整備したと仮定し、次に、確立された情報をどのように活用すればよいか考えなければなりません。まず、住宅ローンを利用しているすべてのお客さまを一定の基準によりランキングやカテゴライズにより体系化することです。お客さま判定基準として体系化された情報を基に、一定の基準日時点のお客さまの状態を過去1年前(または想定する期間前)のお客さまの状態と比較することが評価方法の基本となります。
一定時点のお客さまは、前回の基準日以降取引を継続されているお客さまが大半ですが、その期間中に新たに取引を開始されたお客さま、反対に期間中に取引がなくなったお客さまも存在します。また、取引を継続しているお客さまのなかには、以前と変化のないお客さまのほかに金融機関との取引関係が良好になったお客さまもいれば、逆に取引が疎遠となったお客さまも存在します。つまり、一定の判定基準に基づき2期間の状態変化をとらえることで、住宅ローンを利用しているお客さまの取引実態を正確に把握することができるのです。
これは、その期間における営業活動の実態を反映した内容でもあり、営業活動そのものを評価する際にも同様の分析を行うことがあります。取引実態を把握する際の基本的分析手法として考えることができます。次に、住宅ローン債権そのものの実態管理の基本的考え方をまとめます。具体的には、貸出金全体のポートフォリオのなかに占める住宅ローン債権の実態を債権明細単位で検証する方法です。まず、住宅ローン債権明細別に把握するのではなく、その貸出は「だれ」に対する貸出なのか見極めることがポイントとなります。住宅ローン債権管理用のポートフォリオを作成する場合、これまでは金融機関のB/Sの運用資産のなかで貸出科目が住宅ローンであるものをポートフォリオとしてみていました。
つまり、債権明細別の状態を把握すればよかったのですが、重要な点は、その債権の借主がどのような特性をもっているかを考えたうえで検証することです。具体的には縦軸にLTV、横軸にDTIを一定の階層区分として定義し債権明細を債務者別に集計します。そのなかの1つのセルを指定し、適用金利の階層や、残高の金額別階層を再集計し検証していきます。ここでできたマトリックスのなかから、セル指定で再度、融資残存期間や、セグメント基準という見方で対象とするグループの実態を検証していくことになります。